事前に備えよう、ビジネスケアラー
ビジネスケアラーが増える要因
ニュースを見ていると「ヤングケアラー」という言葉が報道され、注目されるようになりました。日常的に家族の世話などの主たる担い手になってしまっている18歳未満の子どものことを指します。ヤングケアラーとともに喫緊の課題となっているのが、働きながら介護をする「ビジネスケアラー」です。ビジネスケアラーとは、仕事(ビジネス)をしながら介護(ケア)をする人のことです。仕事と介護の両立を求められるため、よく知られていませんが当事者は非常に厳しい立場にあるのが現状です。ビジネスケアラー予備軍である筆者は、不安払しょくのために調べてみました。
ビジネスケアラーが増えている要因は、複数指摘されています。主な要因は下記のとおりです。
◆超高齢社会
ビジネスケアラーが増えている要因のひとつは、超高齢社会です。超高齢社会とは、65歳以上の高齢者の割合が全人口の21%を超えた社会を指します。日本はすでに超高齢社会の状態ですが、2025年になるといわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護などの問題がさらに増えると考えられています。
このような社会全体の高齢化が、ビジネスケアラー増加の要因にもなっているのです。
◆共働き世帯の増加
共働き世帯が増えていることも、ビジネスケアラー増加の要因となっています。近年、夫婦が共働きであることは一般化しています。以前は専業主婦が親を介護するケースが多くありましたが、夫婦のどちらかが家事に専念する家庭は少なくなりました。
介護をする際には仕事との両立が求められるようになり、ビジネスケアラー増加の要因となっています。
◆独身者の増加
独身者の増加も、ビジネスケアラーが増える要因となっています。日本ではこの40年程で未婚率と離婚率が大幅に高まっており、独身者が増加している状態です。
独身者は、親が要介護になっても力を合わせるパートナーがいません。このことが、ビジネスケアラーの増加にもつながっているのです。
抱える課題
◆両立の大変さで疲弊する
ビジネスケアラーは仕事と介護を両立しなくてはなりません。そのため、仕事以外の時間である帰宅後や休日などの時間を介護に費やすことになります。どちらか一方でも多くのエネルギーが必要ですが、その両方を担わなくてはならず、ビジネスケアラーはその大変さで疲弊してしまうことがあります。
◆仕事への意欲が低下する
介護との両立に疲れ、仕事への意欲が低下してしまうことも課題です。介護は一般的に短期では終わらず、長期に取り組むことになります。そのような生活に疲れてしまうと、仕事への意欲を維持するのも困難です。
◆離職率が高まる
ビジネスケアラーは両立の難しさから離職してしまうことがあるため、ビジネスケアラーの増加には離職率の上昇につながるという課題があります。介護休業制度を導入している企業はありますが、取得率はまだ低いといわれています。また、ビジネスケアラーの中には、「周囲に気を使わせたくない」などの思いから、介護をしていることを相談しない人もいるのです。
しかし、そうした状態が続いて仕事の責務や負担が大きくなると両立が難しくなり、結果として離職してしまうことがあります。介護離職は本人だけでなく、企業にとっても損失です。介護による離職率の上昇に、対策が求められています。
大切なこと
仕事と介護を両立する最大のポイントは「収入を下げないこと」です。そもそも、自分の生活(家族の生活)を維持しつつ、介護にかかる費用も負担するとなると、収入を減らすわけにはいきません。そのため、介護休業などを取得する人が少ないのです。
現在、介護には国の介護保険制度をはじめ、さまざまな選択肢が用意されています。人材不足などの課題もありますが、日本の介護のレベルは高く、優れたケアが行われています。経験値ゼロの家族(筆者)が面倒を見るより、プロの力を最大限に利用する方が介護を受ける側も良いはずです。“子どもが親の介護をすべき”という概念を見直すことが、仕事と介護の両立を進める第一歩だと思います。
丸腰で待つのはやめよう
介護することがやってくることはわかっているのに、みんなが丸腰で待っているのが現状だと気付きました。
育児・介護休業法の改正が令和6年5月に公布され、同年10月より実施されます。介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置が事業主の義務になります。こういう情報もどんどん更新されるので、自分から探すことも大事になってきます。
育児・介護休業法という名前になっていますが、介護と育児と大きく異なる点は、先が見通せないことです。だからこそ行政や企業がの情報を活用すべきだと強く感じました。間もなく夏季休暇で家族・親族と会う機会がある方もいるかもしれません。良い機会ですので介護について話すのもいいかもしれません。
当ひろばの「家族」カテゴリーにある『「介護休暇」と「介護休業」を上手に活用しましょう』にも目を通していただき、事前に備えましょう。
更新日:2024年8月9日
【参考】
ダイヤモンドオンライン:https://diamond.jp/articles/-/281285
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